2023年8月6日&13日合併号

そして時は動き出す

 

お盆の時期に6年ぶりに京都を訪れた。

旅の締めくくりに映画『リバー、流れないでよ』を鑑賞した。

京都・貴船の温泉宿を舞台にした作品で、ある2分間を何度も繰り返すという、いわゆる”ループ物”となっている。新潟県でも一時上映していたが、機会を逸してしまったので、ご当地映画だと思って見て帰ることにした。

今回の旅の目的は敬愛する作家森見登美彦氏の作品ゆかりの地を巡ること。

『リバー、流れないでよ』は森見氏とは直接の関係はない。

でも、実は遠い親戚のような関係性がある。

 

原案・脚本の上田誠氏はアニメ『四畳半神話大系』や映画『ペンギン・ハイウェイ』など多くの森見作品の脚本を担っている。

だから、旅の目的にも沿っていると正当化することにした。

映画のストーリの詳細は避けるが、本当に2分間きっかりを何度もワンカットで繰り返している。温泉客が雑炊を食べるシーンがあるが、このシーンも当然繰り返す。何度も雑炊は食べる前に戻る。このために何度も雑炊をつくったのかもしれない。様々な撮影の苦労が見ていて感じられる。

登場人物達のループに対する飲み込みが早く、アドリブっぽいせりふも多く見られ、舞台演劇っぽいノリが終始楽しめる作品だった。そういった雰囲気が好きな人にはぜひ、お勧めしたい。

 

映画を見終わった後、帰りの夜行バスを待つためにバス停前の「なか卯」で最後の晩餐を取っていた。

うどんを半分食べ終わったころ、店員が声をかけてきた。

「ごめんなさい、大盛りだったのに普通盛り出したかも。取り替えますね」

うどんが2分前の姿に戻った。

 

多様性の時代

京都には古くから営業する銭湯が多い。

その理由は戦時中、空襲に遭わなかったからだと聞く。

今回泊まったホテルの近くにも「五香湯」という銭湯があり、利用した。

信じられないくらい暑いサウナが出迎えてくれた。

暑いというか熱い。むしろ痛い。

 

髪を洗う時にある異変に気付いた。

シャワーがボタンを押している間しか出ない。

押すと一定時間出るタイプが一般的だと思うが、本当に押している間しか出ない。

髪を洗う手、シャワーを持つ手に加えて、ボタンを押す手が必要なので、明らかに一本手が足りない。

しばらく方法を考えたが、最適解は出ない。

結論として、この「カラン」は3本手がある人用だったと納得することにした。

今思えば、手が2本であることに慣れすぎていたのかもしれない。

京都大学の構内に貼られいてた部活勧誘のチラシには、ポケモンのカイリキーがせっせと4本の腕でチラシを配る姿が描かれていた。

そう、腕は3本だって、4本だっていい。その方が便利そうだ。

 

そんなことを考えながら、そそくさと別のカランに移動した。